― 柳さんが演じられた田島刑事についてですが、役作りについて教えてください。

 多分、僕はああいう演技しかできないんです。何やってもあんな感じになると思うんです。まあ、主人公の今村刑事の上司ということで、今村との対比は作らないとっていうのはあったと思いますね。

― 今野監督からは「こうして下さい」というのは特になかったんですか。

 なかったですね。「こいつに言ってもしょうがない」と思われて何も言われなかったのかもしれない。監督が東京藝大在学中に撮った『リスナー』というオムニバス作品でご一緒させてもらったことがあって。まあ、監督とは二度目なので、僕のことはわかってくれていたんじゃないですかね。

― 田島刑事は、部下の今村に対して愛情は感じるんですけど、非常に暴力的なところがありますね。演じられていてどうでした?

 なんだろな。まあ今村に対しては口で言っても多分あまり伝わらないかも。むしろ殴って言うことをきかすって手っ取り早いじゃないですか。口で説明していると時間がかかるし、いちいち大変だし。で、殴って言うことをきかす。演出上、時間の節約にもなる(笑)。

― 今村の田島刑事に対する話し方がぶっきらぼうですけど、田島刑事はそれを素直に受け入れてますよね。

 そうですね、多分若い頃は田島自体もああいう人間だったんじゃないですか。相通じるところがあるんだと思います。

― 田島刑事は柳さんが演じたことによって、自然に見れた気がします。柳さんはすんなりと役に入れた感じですか。

 はい、そうですね。僕、基本台本通りなんです。まあ昔は自分なりに色々考えてやりやすいようにやっていたんですけど、ある時からちゃんと台本通りにやろう、セリフも台本通りに言おうというふうに思って。

― それは何かきっかけがあったんですか。

 なんだろう。なんか自分のやりやすいようにやっちゃうと結局同じふうになっちゃうじゃないですか。あとは、自分でホンを書いたりするようになって、ホンを書いた人の意図を尊重しなきゃいけない部分もあるなと思うようになった。前は喋り言葉じゃないセリフだなと感じたら、直していたんですけど。書いてあることをどれだけ人間が言ってるように言えるかっていうね。自分に対する挑戦じゃないですけど、自分に圧をかけないと。

― じゃあ、言いづらいセリフだなと思っても、そのまま喋る。

 基本、書かれたことをそのまま喋ります。昔だったら“こんなやついないよな”と思ってたのを、“いやいやこういう人間なんだ。この物語にはこういう人間が存在するんだ”って考えて。基本、映画って監督が一番メインだと思っているから、どれだけ監督のビジョンに近付けられるかっていうことをまず第一に考える。で、それをどれだけ短時間でできるかというのが仕事ってことかなと、今は思っています。また考え方が変わるかもしれないですけど(笑)。

― 今野監督とは二本目だということですが、監督に対する印象を聞かせてください。

 やっぱり大学院で学んで、映画をちゃんと撮ろうとしている監督だなという感じは非常にあります。自分なりにしっかりしたビジョンがちゃんとある。これからいろいろな仕事をして、人生的にもいろいろあって、そのキャパがどんどん広がっていくことで、なんか監督として面白くなっていくと思いますよね。現時点ではもう結構なレベルにいっている。しっかりしてるんじゃないかなと思います。

― 今村刑事役の生津さんについてはどんな印象を持ちましたか。

 役も役だったのかもしれないけど、あまり余計なことは言わないし、真面目に自分のやるべきことを一生懸命頑張っていましたね。当然かもしれないですけど、芝居が好きで一生懸命考えて、自分なりに色々と演じていらっしゃった。だから、僕なんかから見るとちょっと眩しいところがありますよね。僕は非常にいい加減なんで。出が役者志望じゃないし、別に映画が大好きでとか、芝居が大好きでって、そういうところを通らないで今現在に至ってる。だから、本当に映画が大好きで、芝居が大好きでっていう人に会うとちょっと引け目を感じます。

― そういうものですか。

 はい。だって過去の自分に対して「お前、映画そんなに好きじゃなかっただろ」とか「お前そんなに芝居好きじゃなかっただろ」って自分で思っちゃうんですね。そこで引け目を感じている。現場でも、居づらい感じは常にありますね。俺、本当にここにいていいのかなって。現場に行けば、自分のやるべきこと、やれることは精一杯やるんですけど、ふと引いて考えた時に自分の立ち位置みたいなものを考えます。だから当然、役者然としたようなことも言えないですし、映画に対してもあんまり言えないなって。特に最近、それは思いますね。

― 柳さんのリアリティのある感じが映画に出ていたと思いましたが。

 自分はやっぱり変化球だなとは思うんです。王道を行ってないことに対する、もしかしたらコンプレックスかもしれない。横道を通っちゃってるなっていう感じがある。

― 撮影の合間に生津さんと「ゼマイティス」というギターの話で盛り上がったと聞きました。

 映画とは何も関係ないですね(笑)。どういうわけかそんな話になったんです。僕はもともと音楽少年で、将来はバンドマンになりたかったんです。もう亡くなったんですけどトニー・ゼマイティスって言うイギリスのお爺さんがほぼ一人で手作りしているギターがあって、それを中学高校の時に初めて見て、こんなギターがあるんだって驚いたんです。子ども心に非常に憧れました。

― 今は音楽活動とかしているんですか。

 今は全然やっていないですね。本当はやりたいんですけど、なかなか出来ない。音楽映画をやりたい気持ちもあるんですけど、ちょっと挫折しちゃってる。音楽に対して挫折しているし、芝居とかに関してもなんか挫折ではないんですけど先程話したように引け目があるっていう。でも、なんかまだやめられない。そういう“やれてない”っていう気持ちが、前に進む力になると思うんですけどね。

― では作品の話に戻って、撮影現場の思い出があれば教えてもらえますか。

 基本的に僕は撮影現場がすごく楽しいんですよ。若い頃、軍団のメンバーとたけしさんとで、くだらないことを言いながらコントを作っていた感じを何となく思い出すっていうか。なんか共通するものがあって。もともと僕がバンドマンになりたかったっていうのも結局そういうことなんですよね。バンドで音楽を作るというのが楽しい。集団の中の一人っていうスタンスが楽しい。居心地が良いっていうのが多分あるんです、自分の中には。特に今回の映画はみんな手探りじゃないですか。中国企画で普通の日本映画とは成り立ちが違う。現場も混沌とした感じなんだけど、それが非常に楽しかった。役者もそうで、ヒロインの真崎かれんさんは新人なりにワクワク毎日演じていて、竹中さんはもういるだけで画面が締まる堂々さで、ベテランの味を出していて。混沌ですよ。

― 逆に大変だったとか、辛かった思い出はありませんか。

 何かあってもぶつぶつ文句を言いながらやっているのが、また楽しいんですね。一筋縄でいかない、すっといかない感じが楽しい。勿論やっている時は仕切り方だとか金銭的なとこで不満は持つんですけど。映画一本作るのは大変だとわかるし。僕も短編を撮ったりしているんで、作品に出来ただけでそれはもう大したもんだって、本当によくわかります。

― 最後に、映画を見た感想を教えてください。

 淡々と物語が進んでいく感じが、非常にいいなと思いました。もちろんドラマチックな展開とか変な展開も好きは好きなんですけどね。まあぶっきらぼうと言ってはぶっきらぼうですよね。不親切な作りになってますよね(笑)。でも、それが逆にいいな。脅かすとかどんでん返しに焦点を当てすぎてないのが僕はいいと思います、僕はそういうところが好きです。

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